そっくり人形作りの公式

　いよいよ3月になりました。卒業のシーズンです。私が大学を卒業してからかなりの年月が経ちます。でもついこの間のような気もします。何年経っても学生気分が抜けきらないダメな大人です。いえ、大人になりきれないおじさんと言った方が正しいかもしれません。そんな私でも周りの人からはまともな大人に見えているようです。人間の判断力なんていい加減なものだと思います。そう言う私も周りの人は皆私より立派に見えます。私の判断力もいい加減なのかもしれないと思うとちょっと安心です。
　

自分の居場所

　大学在学時に私は就職活動をしませんでした。建築を専攻していましたが適職とは思えなくて行き先を見失ったからです。それからというものずっと社会の中で迷子状態です。そもそも建築に進んだのは父親の意向でした。当時は将来の仕事のことなど全く考えていなかったため建築士になることに特に抵抗はありませんでした。しかし高校3年の時にイラストレーターになりたいと思うようになり美大への進学を考えましたが〝絵で飯は食えない〟と父親に反対され、それを跳ね返すだけの根性も無くあっさりと建築科へ入学しました。しかし大学3年の時にやはり建築よりも絵を勉強したいとの思いに駆られ、中退してやり直したい意向を親に伝えましたが、母親に〝卒業だけはしてほしい〟と泣かれたため卒業だけしました。主体性のない私です。
　

　自分の思いが貫けなかったのは、私も自分がプロのイラストレーターになれるとは本心では思っていなかったからだと思います。親に反対されて諦めた時点でその才能は無かったということです。才能がある人、つまり天からその役割を与えられた人はそんなことで諦めたりはしないものです。
　

　今となっては大学を卒業しておいて良かったと思います。取り敢えず大卒という学歴があることで劣等感を抱かなくて済んでいますので。それにもしも美大に行っていても周りの人の実力を目の当たりにして劣等感を抱いて結局絵の仕事には就いていなかったと思います。私は実力も自信も無い男なのです。劣等感、コンプレックスの塊です。
　

　そういう劣等感だらけの私なので、どの職場でも自分の居場所を見つけられないまま孤独感・無力感に苛まれてきました。でもこの社会の中で自分の居場所は必ずどこかにある、そう信じて今まで生きてきました。今の仕事はその答えなのだと思っています。