そっくり人形作りの公式

　人の役に立つ仕事をしたい。でも、そもそも人の役に立たない仕事なんてあるのでしょうか。ほとんどの仕事は何らかの形で人の役に立っているものだと思います。ただそのことを実感できるかどうかが違うだけで…。単なる道楽に見える人形作りでもそれを欲しいと言ってくれるお客様がいるということは、その人の役に立っているのだと思っています。手にした人形に満足していただいているなら、という条件が付きますが。場合によっては役立たずになる恐れがあることを肝に銘じないといけません。
　

自分の才能とは

　昨日私は〝自分の持っている能力を活かす仕事を選ぶことが人の役に立つ仕事をすることの最初の一歩〟だと書きました。医者や介護士は人の役に立つ仕事の代表とも言えますが、その仕事に就けたとしても自分にその仕事の適性があるかどうかが重要です。不器用な外科医は御免です。短気な介護士も厄介です。自分がやりたくても適性が合っていなければ結果的に人の役に立たない、と言うよりも人に迷惑を掛けてしまうことになりかねません。〝好きこそものの上手なれ〟という言葉がありますが、私は生まれ持った能力は如何ともし難いものだと思っています。介護士の利用者虐待事件を時々耳にしますが、加害者になった人は適性が合わなかったのだと思います。
　

　どんな仕事でも必ず誰かの役に立っています。工場内で組み立て作業をしている人でもその製品を使う人の役に立っているのです。ただそれを実感しにくいだけです。しかし実感できるかできないかはかなり大きな差です。医者や介護士のように直接感謝の言葉を言ってもらえれば意欲を持ちやすいのですが、工場の作業員はそうはいきません。その製品の購入者から直接お礼を言われることは余程のことが無い限りありません。そのため毎日同じ作業の繰り返しで〝俺はロボットと同じだ〟と感じてやりがいを失っている人は少なくないと思います。作る人がいるからそれを使うことが出来る、それは間違いありません。ただその仕事で自分の能力を活かせているのかと問われると何と答えて良いのか分かりません。
　

　でも、どのような状況であろうとずっと同じ仕事を続けることが出来るというのはその人の才能だと思います。私には出来ませんでした。新卒から定年まで一つの会社で勤め上げた人はそれだけで尊敬します。人間にはいろんなタイプがあって、どのような仕事をするのかに拘る人もいれば、内容に拘らずに与えられた仕事に励むことが出来る人もいます。内容を問わずに与えられた仕事に励めるのは才能です。上司の言うことに素直に従うことが出来るのも才能です。そのような能力は私にはありません。時々〝辞めたいけど辞められないから仕方なく今まで続けている〟という人がいますが、それも才能だと思います。辞めたい程嫌な仕事なのに続けていられるというのは我慢出来る能力を有しているのです。
　

　〝自分には何も才能がない〟と言う人がいますが、才能を他人と比べて明らかに秀でた能力だと思っているからそう思うのです。そうではなく、一般的なレベルで見たら特別優れていないかもしれないけど、自分の有している能力の中で優れているものだと考えれば良いのです。社会全体での偏差値は50だとしても自分の中の偏差値が70のものは必ずあるはずです。もしかしたらそれは〝優しさ〟かもしれないし〝笑顔〟かもしれません。他人の能力を羨んでいるだけでは自分の能力が上がることはありません。でも自分の持っている能力を有意義に活用することで50だった偏差値が55や60に上がる可能性があります。それが私のような凡人が社会のため、人のために出来ることなのだと思います。