そっくり人形作りの公式

　私は今は人形作りを生業としています。が、ここまでくるのにかなり回り道をしました。いくつかの仕事を経験しましたが、どの仕事でも自分の思いが満たされません。こんな気持ちで残りの仕事人生を過ごすことを想像するとやりきれない気持ちでした。多くの人は皆そのような思いで働いていることは分かっています。でも自分が定年までその仕事を続けている姿をどうしても想像できません。社会に出て何年経っても大人になりきれない自分がそこにいました。でもそれが自分なのだから仕方がありません。生まれ持った性格は如何ともし難いものです。
　

人それぞれの能力

　そんな私には自分が出来ることを自分で仕事にすることが今後の道だと思えました。いろんな仕事を経験して出した結論が〝自分にとって続けられる内容と環境の仕事をすることが大事〟ということです。そして〝人は皆それぞれ生まれ持った能力に違いがある。だからこそ自分が得意だと思えることを仕事にすることが社会貢献になる。〟という言葉を何かの本で知りました。スポーツが得意であればスポーツを、音楽が得意なら音楽を、勉強が得意なら勉強で得た知識を活かした仕事をすれば良いのだということです。社会全体を見たときに他の人には簡単に埋められないけど、自分の持っている能力でなら埋められる穴がどこかにあるのだと信じることにしました。たとえそれで生活が苦しくなるとしても、自分がその穴を埋めることでそれまでよりも社会が円滑で豊かになるのだと思うようになりました。
　

　では自分には何が出来るのか。そこが多くの人にとっての難問です。自分が得意と思えることで仕事になりそうなことって何だろう。皆そう考えて答えを出せずにいるのではないでしょうか。結局自分には何も得意なことは無いから今のまま続けるしかない、という答えになる人は多いのかもしれません。でも名も知られていない中小企業の一従業員として働けるのならそれで良いのではないでしょうか。そういう人がいてくれるからこそ社会が成り立つのですから。職業に貴賤無し、と言いますがその通りだと思います。世間では華やかな職業や儲かる職業を羨ましく感じるものですがやっていることは一緒です。社会の穴をそれぞれが自分の出来ることで埋めているだけです。今の仕事を続けていけるのであればそれで十分社会の中の役割を果たしているのだと思います。続けていけるかどうか、それが大事なのです。私から見たら与えられた仕事をなんだかんだ言いながらも続けていられる人はとても立派です。