そっくり人形作りの公式

　完璧な物を作りたい、物作りに携わっている人はそう思うことが多いでしょう。では物作りをしている人は自分の作品で完璧だと思えるものを作ることが出来ているのでしょうか。そもそも完璧なものとはどういうものか、その答え自体が分かりません。〝全ての人に愛される物〟というのが一つの答えなのかもしれませんが、恐らくそんなものは存在しないでしょう。もしもあるとしたら何となく怖いです。
　

完璧な物とは？

　日々完璧を目指して物作りをしている、そんな人は多いと思います。しかし完璧は陽炎みたいに実態が捉えにくいうえにどこまで行っても近付けない、私にとってはそのようなものです。つまり完璧は常に目指すもので到達するものではないのではないか、そんな気がしています。最初の頃と比べれば随分前に進んでいるけれど、完璧までの距離は全く縮んでいない感じです。
　

　人間国宝級の芸術家であれば自分の作品は完璧なものだという自信はあるのかもしれませんが、私にはそのような境地になることは想像が付きません。1つの課題を克服出来てもすぐに別の課題が出てきてその対処法に苦慮するという繰り返しです。思いつく対処法もベターなものであってベストだとは思えないため暫定的なものとなることもあります。そのように暫定的な部分を残している以上は完璧には遠いということになります。
　

　ただ、完璧なものが出来てしまうとそこで進化は終わってしまうことになります。完璧なものが出来るようになったのなら進化の必要は無いのかもしれませんが、そうなるとその後の制作はルーティンとなってしまい楽しくなくなってしまうのではないかという懸念があります。人間とはもう今以上進化しないことが分かるとやりがいを感じにくくなるのではないでしょうか。物作りに限らずどんなことでも挑戦する意欲が人生を豊かにしている気がします。
　

　このように考えると完璧なものを作れないままいつまでも試行錯誤している方が幸せなのではないか、そう思う今日この頃です。