そっくり人形作りの公式

　この店長日記で失敗は成功の基というようなことばかり書いています。何だか失敗ばかりしているように思われているかもしれませんが、私だって上手くいくこともあります。もちろん失敗するのは試作品の話でお客様にお渡しする人形に失敗作はありません。ただ、成功とはどういうことなのかを改めて考えると良くわからないことに気付きました。
　

成功とはどういうこと？

　失敗は上手くいかなかった時のことなので私にとっては分かりやすいです。じゃあ上手くいったら成功なのかというと何か違うようにも感じます。なぜならその時は上手くいったと思ってもその後に〝やっぱりこれではダメだな〟と思うことが良くあるからです。最初はこうしてみようと思って取り組んでみて思い通りに出来ても、その出来上がったものを実際に見てみると〝ここはこうした方が良いな〟と思うことは珍しくありません。そうなると一体どうなったら成功と言えるのか迷います。
　

　人生において成功を収めたと言われる人でもその後に転落した人生を送る人も数知れません。逆に存命中は不遇な人生でも没後に高い評価を受ける芸術家も珍しくないようです。そして私のように低空飛行のまま人生を終えそうな人間に成功という言葉は無関係のようにも感じます。墜落しないように気を付けるのが精一杯ですから。
　

　完璧と思える作品を作れたら成功なのでは？とも思いますが、その完璧自体が分かりにくいです。自分の作品がどうなったら完璧なのかという固定されたイメージがないからです。これって物作りをしている人間としては失格なのでしょうか。でも作っているといろいろと考えが浮かんできて作品の理想像が変化してしまうのです。こうなったらおもしろいな、こうした方が喜ばれるんじゃないかな、とか。
　

　結局私には成功という言葉は似合わないのだと思います。今までの人生を振り返ってみてもそうです。失敗の繰り返しばかりです。でもそれを後悔することはありません。それらの失敗があったから今の幸せがあるのですから。そう、唯一成功したのは結婚です。…これを言っておかないと怒られます。ただ、まだ人生は終わっていないのでこれからどんでん返しがあるかもしれません。