やりがいと幸せ

　お金がたくさんもらえることや自分の職務でスキルアップすることが仕事のやりがいに繋がる、それは確かだと思います。そこでウェルカムドールたちは自分たちについて考えました。
　

やりがいのある仕事とは？

　「私たちの仕事ってご主人様の代わりを務めることでしょ。それってお金をもらえるわけじゃないよね。」
　「そうだね。最初にご主人様から仕事の依頼を受けたときはお店の店長にお金が入るけど、僕たちは一銭ももらってないね。」
　「店長の独り占めだね。なんかずるいな。」
　「ブラック事業所として訴えるか。」
　「そんなことしたらお店が潰れて後輩たちが路頭に迷うから出来ないよ。」
　「そうか、仕方がないな。」
　「どうせ私たちがお金もらっても使えないし。後輩たちのために店長に使ってもらった方が良いと思うよ。」
　「店長が私的に流用しないように皆で祈ろう。」
　「店長は奥さんに養ってもらっているみたいだからちょっと心配だね。」
　「稼ぎ悪いからね。」
　「お金はやりがいにならないとしたら、僕たちのスキルアップってどんなことだろう。」
　「う～ん、難しいな。すでに完成形だからこれ以上美形になれないし。常に受け身の姿勢だから自分で動くことも出来ない。」
　「ご主人様に動かしてもらうしかないからね。何かもどかしいな。」
　「お金はもらえないし、スキルアップも出来ないなら、私たちのやりがいって何なの？。」
　「この前誰か〝ご主人様たちが喧嘩をしても私を見て仲直りしてくれるとウェルカムドールになって良かったって思う〟って言ってたね。それがやりがいなんじゃないかな。」
　「そうだね。ご主人様の幸せに貢献できているってことにやりがいを感じるな。」
　「僕たちはただ立っているだけで何もできない。自分から言葉を発することも出来ないし、動くことも出来ない。部屋の片隅でじっと立っていて見てもらえるのを待っているだけ。そんな僕たちだけど、ご主人様が結婚するときから一緒に思い出を作ってきているんだよ。結婚したばかりの一番幸せな時からね。だから普段は忘れられていても何かあった時にふと僕たちを見てくれたらその時のことを思い出してくれるんだ。」
　「それでまた２人は笑顔になれるんだね。」
　「そう、ご主人様を笑顔にすることが僕たちのやりがいなんだよ。」
　「お金をもらえなくても、スキルアップ出来なくてもいい。結婚式当日のままでいることが大事なんだね。」
　「同じままだからこそ、ご主人様は僕たちを見て笑顔になってくれるんだ。」
　「一緒に歳をとってしわや白髪が増えたら寂しくなるかもね。」
　「というより、怖いだろ…。」