選ばれしものとは　ウェルカムドール制作に役立てるため、癒しについて考えています。
　今回は我が家のぬいぐるみを基に、捨てられずに残される要件を考えます。
　

選ばれる理由　残されたぬいぐるみには理由があります。それぞれに思い入れがあるのです。そのぬいぐるみを見ると頂いたり購入した当時のことを思い出して懐かしくなり、何となく心が和むのです。これはそのぬいぐるみが持つ癒し効果です。日常の生活の中ではその存在を忘れていることが多いですが、何かの機会でふと気付いたときに懐かしさが湧いてきます。
　

　我が家に選ばれしぬいぐるみは「結婚した時に友人からいただいた」「子供が生まれた記念に自ら購入した」という思い出があります。やはり結婚と誕生は人生においてかなり大きな出来事です。特に社会の流れに付いていけず一生独身、借家で孤独死を覚悟していた私にとっては大きな転機となりました。ちなみに友人からいただいたぬいぐるみはクマ一頭だったので、あとからウサギを一匹購入してペアにしました。クマとウサギのカップル、果たして私と妻のどちらがクマでしょうか、と聞くだけで怒られそうです。
　
　残念ながら私の結婚式にはウェルカムドールはありませんでした。17年前のことで当時はまだ受付に人形を飾るということは少なかったのではないかと思います。私も知りませんでした。もしもあったのならば、そのウェルカムドールも選ばれしものになったでしょう。
　　

選ばれしものになりたい　結局選ばれしものになれるかどうかは、その人形に対して思い入れがどの程度あるかということに尽きると思います。「愛する人からもらった」はもちろん「海外旅行で買った」「高価だった」「特別限定品で貴重」などいろいろな理由があるでしょう。多くは手にしたときにその運命が決まっていることが多そうです。この子たちは恵まれています。まあ、中には新たな彼氏（彼女）ができたので「もう見たくない」と突然の別れを告げられることもありそうです。恋人からのプレゼントの場合、将来が約束されたわけではないので安心はできません。
　

　ただ、手にしたときは特に何でもない普通の人形でしかなかったのに、次第に何らかの理由で愛着が湧くこともあります。前回お話しした「長いこと抱いているうちに別れがたくなる1号さん」もその類です。「たまたまこの子しかいなかった」のが「この子じゃなきゃイヤ」になればしめたもの。1号さんとの幸せな時間を大切にしてほしいですね。
　

で、結局どうなの？　ドールクリエイターとしては、自分の作った人形はご主人様の所でいつまでも大事にしてもらいたい、というのが当たり前の心理です。そもそもウェルカムドールというのは、初めから思い入れがあるものとして生まれるのが普通です。それなのに捨てられるのは余程の事情があるということでしょう。二人の不仲（いやいや、縁起でもない…）はないものとして、考えられるのはどういうことでしょうか。
　・そっくりに作るといわれたのに似ていない。
　・汚い、臭い。
　・作りが悪くて壊れた。
　・当時はそっくりだったが、整形したため過去の顔を見たくない。
　・当時はそっくりだったが、禿げたためふさふさの髪の毛を見たくない。
　・夜中にこっそりと歩き回っている。
　などでしょうか。制作者として気を付けないといけません。
　

　結局は本人そっくりに作るウェルカムドールやメモリアルドールは生まれながらにして選ばれしものと言えます。いうなればエリートです。私とは違います。それだけにお客様の思い入れは完成品を見る前からとても強いことでしょう。制作者はその期待を裏切ってはいけないということです。そしてお客様はできればドール購入後に整形しないようにお願いします。禿げるのは仕方がないです。かつらという手段もあります。