癒されない人形とは

　ウェルカムドール制作に役立てるため、癒しについて考えています。
　人を癒す人形を作りたいとの思いを以前書きました。では癒されない人形とはどのようなものでしょうか。
　

ストレスが高まる人形　ここまでの話で、意図的にストレスレベルを高めることが癒しの反対であることが分かりました。果たしてストレスレベルが高まる人形とはどんなものだろうかと想像しました。もしもこのような人形が自分の部屋にあったら、ということです。　
　・嫌いな人からもらった人形
　・高い金額で購入したのに気に入らない人形
　・馬鹿にされているように感じる表情の人形
　・会話をするが愚痴ばかり喋る人形
　・そっくりに作りましたと言われたブサイクな人形
　・フラれた相手や嫌いな上司にそっくりな人形
　・年々少しずつしわや白髪が増えていき、背中が曲がっていく人形
　などいろいろありそうです。制作する側として気を付けなければいけません。

存在感のない人形

　上記はストレスを高めるという人形ですが、本人に何らかの影響を与えるという意味では存在感があると言えるでしょう。さみしいのは「何の効果もない人形」です。あってもなくてもかまわない、誰にも気付いてもらえない、何の思い出もない人形。部屋の片隅で一人ひっそりとたたずんで皆に忘れ去れているほど悲しいことはありません。少年時代の私のようです（今でも変わりませんが）。たまには気付いてほしいと思っていることでしょう。
　

　そういえば我が家にも多くのぬいぐるみがありました。自分たちで購入したものではなく、子供のために頂いたものとか親戚がゲームで取得したものなど結構ありました。子供たちも小さいときはそれなりに遊んでいたのですが、すでにぬいぐるみで遊ぶ年齢ではなくなったため、しばらく押入れの中にしまい込んでいました。半年ほど前に我が地域でもごみ有料化制度が導入されることになり、有料化前にほとんどのぬいぐるみたちは燃やすごみとして我が家を去っていきました。子供たちも気にする様子はありませんでした。ぬいぐるみ好きの方からは非難を浴びそうです。ごめんなさい。残ったのは思い入れのあるもの数点です。
　

　結局思い入れのない人形はこのような末路をたどることになります。家の中で存在感のない私もいつそのような運命になるか、と不安な毎日です。
　

癒されない人形　我が家を去ったぬいぐるみたちはストレスが高まることはないけど癒されもしない人形でした。強いて言えば収納スペースを要していたことが僅かなストレスだったと言えるでしょう。だからこそ捨てられたわけです。つまりあってもなくても構わないけど邪魔と言えば邪魔、何かの機会があれば処分しよう、ということです。このことは人形に限ったことではないでしょう。貧乏性で捨てられない性分の私の身の回りには結構あります。
　

　以前ぬいぐるみを抱きしめると癒し効果があると書きました。でもぬいぐるみであれば何でも良いのでしょうか。もしも家にぬいぐるみが一体だけしかなければ最初に抱きしめるのはその子（仮に１号さんと呼びます）になります。でもすぐに自分でお気に入り（２号さん）をどこかで調達してきたら、１号さんはお役御免になりそうです。逆に１号さんとの付き合いが長くなれば新品の２号さんが目の前に現れても１号さんと別れる確率は低くなるでしょう。何故でしょうか。それまでの思い入れがあるからだと思います。きれいな２号さんよりも自分の涙が染みついて悩みを聞いてくれた汚れた１号さんに愛着が湧くのです。１号さんとの思い出があるので、抱きしめなくてもそこにいるだけで癒してくれるのでしょう。
　

　結局、癒されない人形とは何の思い入れもない人形のことなのではないかと思うのです。