110番の日

　今日1月10日は110番の日です。日付にちなんでいることは明らかです。1985年（昭和60年）に警視庁が制定し、翌年の1986年（昭和61年）から実施されています。110番に関心を持ってもらい、110番の適切な利用を推進することが目的です。
　

緊急な対応の判断

　「昨年1~11月に全国の警察が受理した110番通報のうち、18.4%は緊急の対応が不要な内容だった」との報道がありました。不急な内容で悪質なケースは、偽計業務妨害や軽犯罪法違反事件として摘発されるそうです。困っていても不急のものは警察相談専用電話（＃9110）を利用するようにとのことです。
　

　緊急の対応が不要だと判断されたものの中には「家の中にゴキブリがいる」というものもあったとのことです。「そんなことで通報するなんて…」と思ってしまいますが、本人にしてみたら一大事だったのではないでしょうか。恐らく自分ではどうしようもなく、近くに駆除をお願いできる人もいなく、警察に頼るしか術はなかったのではないかと思います。落ち着いて考えればそんなことで110番通報することはおかしいことは分かりますが、パニック状態になっていたら適切な判断は出来ないものです。
　

　我が家でもクモがでたら一大事です。私以外はクモが大嫌いで、砂粒程の小さなクモでも逃げ回ります。自分たちで退治できないので、必ず私が呼ばれます。殺虫剤を使えば済みそうですが、それも怖くて出来ないようです。私がいなかったら一体どうするのかと心配になります。まさか110番通報はしないでしょうけど。ゴキブリで通報した人も、それくらい苦手だったのだと思います。
　

　私の住む地域では猿の出没が相次いでいて、発見したら110番通報するようにとの通達がありました。（私が遭遇する時はいつもランニング中で通報する手段がないためしたことはありません。）猿で通報して良いのならゴキブリで通報しても良いのではないかと思う人がいるかもしれません。
　

　ストーカーが現れたら110番通報はＯＫでしょう。でもしつこいセールスマンが現れたときに通報しても良いのでしょうか。本人にしてみたらどちらも早くいなくなって欲しいと思うのは同じです。ストーカーに危害を加えられるとは限りませんし、セールスマンが危害を加えないとも限りません。両者とも玄関の外で本人が出てくるのを待っているという状況は同じです。本人にとってはどちらも怖いのです。この場合セールスマンのしつこさの程度で判断が分かれるのではないでしょうか。でも「セールスマンで110番通報」と聞いたら違和感を覚える人は多い気がします。
　

　結局何が適切かは、「一般的な常識に照らし合わせて」ということが通常の判断になるのでしょう。本人の恐怖の程度で計るものではないようです。でも「一般的な常識」というもの自体が曖昧です。それに何に恐怖を感じるかは人それぞれです。猿よりもゴキブリに身の危険を感じる人がいても不思議ではありません。恐怖のあまりパニック状態で110番通報してしまうことは理解できないことはありません。
　

　昭和の時代の田舎の駐在さんだったらゴキブリ退治もしてくれたかもしれません。しかし、令和の時代は違います。警察の常識と自分の常識が一致するとは限りません。適切な判断とは難しいものです。パニック状態になったら尚更自分がどんな行動をするかなんて予測できないでしょう。ゴキブリ通報で笑った人（私もその一人です）も、明日は我が身、かもしれません。