成長するということ

　ここ数年、春になると我が家の玄関先に燕が巣を作っています。巣作りを終えて産卵し、ひなが生まれ親燕が子育てする様子が毎日見られます。今年は4羽生まれたようで、巣から顔を出しピーピーと親を呼ぶ姿は何とも愛らしいものです。
　

　そのひな達も先週巣から飛び立つことが出来るようになり親子揃って空を飛び回るようになりました。そして昨日あたりから巣に戻らなくなっているようです。玄関先が糞で汚れることが無くなりました。我が家の前を飛ぶ姿を見かけることはありますが、一体どこでどうしているのかは分かりません。
　

　燕の成長は早いものです。そろそろ旅立ちの時が来たようです。遠くへ旅立つ前に一声かけてほしいですが、それは無理な望みでしょう。僅かな間でしたが毎日様子を見ていると家族の一員のように思えてきます。いなくなると思うととても寂しいです。このようにして我が子もいつかは親から離れていくのでしょう。成長すると言うことは喜ぶべきことなのですが、寂しさも伴います。
　

子育てというもの

　この数日、引きこもりとなっていた大人が関係する事件が続けて起きました。先に起きた事件は加害者であり、後の事件は被害者です。報道によると後の事件は先に起きた事件が要因となり我が子が加害者になる前に親として手を下した可能性があるようです。
　

　子供が引きこもりになりそのまま大人になる例は意外と多いのかもしれません。社会人になってから引きこもる人もいるでしょう。今回の事件を受けて〝子供が引きこもりになるのは親の育て方が悪いからだ〟との声もあるようです。そして今回のような引きこもりに限らず残虐な殺傷事件が起きると必ずと言っていいほどそのような人物に育てた親の教育方法に対して疑問を投げかける人が出てきます。
　

　私は子育てに成功も失敗も無いと思っています。どのように育てても子供たちは自分で勝手に成長してしまいます。親の思い通りには育たないものです。もちろん親に虐待されて育った子供はそのことで何らかの影響を受けることは間違いないでしょう。だからと言ってそのような子供達全てが親や世間を恨み続け性格が歪んだまま成長するとは限らないと思います。心に幼少期の暗い影を持ちながらも明るく健全に生きている人はいるはずです。その違いは生まれ持った個体差によるものだと思います。親と言えども子供の性格を変えることは出来ません。
　

　燕の子供達も皆同じように見えますがそれぞれ個体差があるはずです。親の役目は、ひなが小さいときは住む場所と食べるものを提供すること、ある程度成長したら飛び方と餌の取り方、危険から身を守ることを教える程度ではないでしょうか。それを覚えた子供たちはあとは自分で考えて感じてそれぞれが自分なりに成長していくだけなのだと思います。そうなったらもう親の役目は出来るだけ子供に迷惑を掛けずに生きていくだけのような気がします。そして大空を飛び回る子供たちを見守るだけです。うれしいような、寂しいような…。