そっくり人形作りの公式

　私のそっくり人形の原点は似顔絵です。以前から似顔絵は趣味の一つとして描くことがありました。似顔絵と言えるかどうかは分かりませんが、小学生の時に図工の時間に担任の先生を描いてとても褒められた記憶があります。その他には高校の授業中に教科書の余白にそれぞれの教科の先生の顔を描いていた記憶などが残っています。
　

似顔絵の力

　大学在学中にいろいろな芸能人の似顔絵を描くようになりました。それは情報誌〝ぴあ〟の表紙の影響があったと思います。イラストレーターの及川正通氏が有名人の似顔絵を描いており何となくそれに憧れていたように記憶しています。当時は東京で一人暮らしをしており自分も及川氏のような仕事をしたいと思っていたのでしょう。しかし自分には大きな欠点がありました。下書きは上手く掛けるのですが、色を付けると台無しになってしまうのです。自分の思うような絵に仕上がらないため鉛筆書きのモノクロのままの似顔絵が残るばかりでした。
　

　しかしパソコンが普及したことでその欠点を補う手段が出来ました。パソコンなら色付けを失敗してもすぐにやり直せます。そのため似顔絵をきれいに仕上げてプレゼントすることも容易になりました。いつの頃からか前職場で送別の記念として異動や退職する職員の方に似顔絵を渡すようになりました。
　

　似顔絵を渡して驚いたことは、ほとんどの方がとても喜んでくれることです。これは私にとっては全く予想外のことでした。ちょっと笑ってお礼を言われておしまい程度のものだと思っていたのですが、宝物だと言ってくれる人もいるくらいです。一体何故それほどまでにうれしいのか私には未だに良く分かっていません。でも似顔絵にはそれほどまでの力があるものなのだということは分かりました。
　

　自分が持って生まれた能力で誰かのために役に立てることがあるとすれば、こういうことなのかもしれないと思えるきっかけが似顔絵なのです。