そっくり人形作りの公式

　そっくり人形は究極のオーダーメイド。私は先日そう表現しました。しかし、よくよく考えてみると果たしてそうなのだろうかと疑問が湧いてきました。単に本人そっくりに作るというだけで、それ以外にお客様のご要望を受け入れて作る部分は少ないからです。ということは、どこにでも売っているミッキーマウスの人形をミッキーマウスが買うのと大きな違いは無いのではないか。そんな風に思えてきました。
　

オーダーメイドではあるけれど

　〝オーダーメイド〟とは和製英語のようですが、そのまま訳すと〝注文して作られたもの（注文を受けて作ったもの）〟になると思います。その観点からするとそっくり人形はお客様からの注文があって初めて制作を開始するのですから確かにオーダーメイドだと言えます。しかし、洋服のオーダーメイドにおいてはお客様の身体の寸法に合わせるだけでなく、お客様の希望する生地やデザインで作るのが一般的なのではないでしょうか。それに比べるとそっくり人形を制作している多くの業者は顔をそっくりに作るだけでそれ以外の要素は業者の指定した内容を変えることは出来ないところが多いようです。ポーズや衣装、大きさを希望通りにすることくらいは受け付けている業者もありますが、元々の素材をお客様の希望通りに選べるという話は聞いたことがありません。そう考えると究極のオーダーメイドという表現は適切だとは思えません。それなのにそう表現してしまったのは制作者として思い上がっていたのかもしれません。もっと謙虚にならないといけませんね。反省。
　

　究極というのであれば、全てをお客様のご要望通りに制作する必要があるのではないでしょうか。いや、全ては無理だとしても殆どの部分でそれが可能になる体制を取っておくことが求められるように思います。お客様がイメージしている人形をお客様に替わって制作するということです。それが出来たらとても素晴らしいことです。でも制作費用はいったいいくらぐらいになるのでしょうか。それが気になります。
　

　ただ、一つの業者でもある程度の規模であれば、粘土でも作るし樹脂でも作る、ぬいぐるみでもOKということは出来そうです。また、それぞれ個人で活動している作家が1つのグループとして注文を受けるということでも可能です。そういうところが出てくれば面白いですね。
　

　そっくり人形がオーダーメイドであることは間違いないのですが、逆にオーダーメイドだからこそ商売になっていると言えます。一般の人にそっくりな人形を既製品として売ることは考えられないからです。既製服のようにその辺の店に私のそっくり人形が陳列されていても誰も購入しないでしょう。買う人はかなりの変わり者だと思います。売れればうれしいですが、ちょっと怖いです。