そっくり人形ヒロのひとりごと 190727 ~聞いてもらいたいわけじゃないけど…~

天才と部活動

 高校野球の地方予選の決勝でエースで4番の選手を出場させずに大敗を喫した高校がある。監督は選手の将来を考えて故障のリスクを避けるための選択だったと理由を述べた。この選手は日本球界の宝と称されアメリカのメジャーリーグからも視察に訪れるほどの才能の持ち主である。多くの人は決勝で登板するだろうと思っていたためがっかりしたと思うが、この監督の選択には称賛の声が多い。
 

監督の選択は英断なのか

 この選手(S選手)は前日の準決勝でも先発し130球近く投げて完封している。そのため決勝を投げると連投になり肩や肘に負担が掛かるため決勝での登板を回避した。本人は投げるつもりでいたようだが、監督の一存で決めたようである。これだけのことなら称賛されることも理解は出来る。
 

 高校野球では勝ち抜いていくとエースと言われる選手が連投をすることが当たり前となっている。しかしそれにより多くの才能ある選手が肩や肘を故障しやすくなり、その後の選手生命に大きな影響をもたらしていることは以前より知られていた。その事実が数年前から高校野球の悪しき慣習として捉えられるようになった。そのため連投をさせたり球数を多く投げさせたりすることは避けるべきとの声が多くなっている。
 

 しかし、実際にはよほどの強豪校でなければ有能な投手を複数抱えるのは難しいという事情がある。甲子園を目指して勝ち抜くにはエースと呼ばれる投手一人に頼らざるを得ない学校は多い。地方予選ならまだ2番手、3番手の投手でも勝てる試合はあるが、甲子園に出てからはそうはいかなくなる。
 

 そこで今回S投手を決勝で登板させなかったことに対しては〝勝つことだけに拘らずにS選手の将来のことまで考えた素晴らしい采配である、他の監督も見習うべき〟という論調が多い。でもそんなに単純な視点だけで評価して良いのだろうか。何となく腑に落ちない。エースの連投を避けるために決勝戦に4番手と言われる投手に先発させ、初回から失点を続けていてもいつまでも続投させて大敗したのである。連投にならない2番手、3番手の投手がいたにも関わらず。これでは勝つための采配とは言い難く、勝利への意欲が伝わらない愚策だと言われても仕方がないと思う。エースの連投が問題なら決勝戦が連投にならないようにそれまでの試合で調整するのが名采配なのではないだろうか。私には敢えて甲子園に行かない選択を監督が独断で決めたように感じられる。
 

 S選手はチームメイトと甲子園に出場することを夢見ていた。恐らくチームメイトもS選手がいるなら甲子園に行けるかもしれないと思っていただろう。そして実際に決勝まで進むことが出来ている。あと1つ勝てば夢が叶うという時に頼りのS選手がいないと知ってどう思っただろう。相手は県内きっての強豪校。エースで4番が不在で勝てるとは思えないというのがチームメイトの本音ではなかろうか。高校野球は部活である。今まで一緒に頑張ってきた仲間と共に夢を叶えたい、そう思うのが普通だろう。当然その中にはエースで4番は欠かせない存在となっているはず。団体競技なのだから誰か一人の力に頼らずに勝つのが筋であるという理屈も理解できるが、実際には一人または複数の才能ある人の力が大きいことは間違いない。高校の部活はそういうものだ。他のメンバーはこの主力と言われる仲間がいるから勝てていることは自覚しているだろう。
 

 S選手は前日の準決勝で試合後に〝決勝で勝たなければ1回戦で負けるのと同じ〟という内容のコメントを残している。その言葉から決勝戦では自分が投げて勝ち、仲間と甲子園に行くことを望んでいたように思う。実際に決勝戦後には〝投げようと思えば投げられた〟という旨のコメントをしている。チームメイトの父兄や地元で応援する人たちも皆S選手が投げて勝つ、そして自分たちの子供が甲子園の舞台に立つことを信じていただろう。それだけに〝何故?…〟という思いはそれら関係者の方にこそ大きいと思われる。
 

 団体競技である以上一人の有能な選手の事情だけを考慮するわけにはいかない。しかも今回は不確実な事情である。決勝に投げたら必ず故障することが分かっているのなら回避は当然だが、そうではない。故障するかもしれないけどしないかもしれない。もしも故障するリスクを重視するのなら決勝戦が連投にならないようにそれまでの試合を采配すれば良いのである。試合スケジュールは事前に分かっているのだから。準決勝で完投させたこと自体が采配ミスで、監督自身が故障のリスクを高めたとも言えると思う。
 

 監督が投げさせないことを決めたのは決勝当日の朝とのこと。これが本当だとすると準決勝終了時点では連投させることも考えていたことになる。これは、〝連投=故障のリスク⇒登板回避〟という考えに固執していたのではないと考えられる。実際にそれまでも1試合で190球以上投げさせるなど、故障してもおかしくない采配をしている。それなのに肝心の決勝で急にリスクを考えたというのは何か矛盾している。本来なら決勝で万全なパフォーマンスが出せるようにそれまでの試合で控え投手を上手く使った采配をするのがS選手とチーム全体のことを考えた策である。しかし実際には行き当たりばったりの采配のように感じられ、予選会全体を考えたマネジメントが出来ていないと言わざるを得ない。予選を通じたS選手の起用法には故障に対する配慮の仕方に一貫性が見られない。
 

 決勝の采配が英断だと称賛する人はS選手に4回戦で194球を投げさせた時に批判をしたのだろうか。翌日に決勝を控えた準決勝戦で先発させて早々に5点リードしたにも拘らず継投しないで130球近く投げさせて完投させたことに疑問を抱かなかったのだろうか。このような起用をしていたら故障するかもしれないのである。そこに疑問を持たずに〝エースを故障のリスクから救った〟という決勝戦での事実だけに注目して称賛するのは全体を見ていないのだと思う。それまでに回避できるはずのリスクを背負わせておいて、肝心の決勝で回避するということは称賛される采配とは思えない。中途半端に起用して肝心のところで外すやり方は選手全員にとって残酷な采配なのではないか。
 

 高校野球は部活である。主力選手を軸として全員が力を合わせて勝利を目指すものである。悔しくても控え選手は試合に出ることは出来ないので応援でチームを盛り立てることになる。それが現実である。それでも長い練習期間を経て多くの選手たちはその実力差を正しく理解して自分のポジションを自覚しているだろう。それゆえにいきなり自分の実力に見合わない大役を命じられても戸惑うだけなのではないか。大事な決勝戦で先発すると思っていたエースの代わりに4番手の投手が当日の朝に初めての先発を言い渡されて喜べるのだろうか。いつも応援する立場だった選手には荷が重すぎるのではないか。打ち込まれても替えてもらえず更に失点を重ねていくことはただ辛いだけなのではないか。この選手の気持ちを考えるとあまりにも気の毒である。他のメンバーたちも当然のように頼りにしていた主力が不在であることを聞かされて敗戦の色が濃い試合に希望が持てたのだろうか。エラーも続き回を重ねるごとに失点が増えていき、自分たちで得点することもままならない状況をどう感じていたのだろうか。あと少しで手が届きそうだった夢が試合が進むにつれてどんどん遠のいてく状況の中、自分たちの無力さばかりが残ったのだとしたら、この監督の采配が称賛に値するとは言えないだろう。
 

 確かにS選手の将来のことを考えることは大事である。しかしS選手も甲子園を目標に今まで頑張ってきたのである。才能が開花したことで世間の注目を浴びることになったが、ここまで注目されなければこの決勝戦も当然のように投げてチームメイトと共に夢を追い掛けていたはずである。周りの大人が本人の意志とは無関係に勝手に変わっただけで、本人やチームメイトの思いは変わっていないだろう。もしも決勝戦で投げて故障して、更に負けたとしてもそれはそれで納得して達成感は持てただろう。そこで野球人生が終わったとしてもそれは本人が自分で選んだ道なのだから自分なりに消化できて悔いが残ることは無いと思う。しかし今回のように自分の意志とは関係ない大人の力で自分とチームメイトの夢を手放さざるを得ない場合は消化不良のまま大人になることになる。そしていつまでも消化できないまま一生を過ごすだろう。たとえメジャーリーガーになって成功したとしても〝あの時に投げなかったから今の自分があるんだ〟などと心から素直には思えないだろう。決勝戦で投げても故障しない可能性が充分に考えられるのだから。人間とはそういうものだと思う。〝あの時に投げなかったから今の自分があるんだ〟と思えるくらい活躍してほしい、なんて大人の勝手な理屈である。
 

 決勝戦で投げさせないという決断はあって当然だと思う。そのことに異を唱えるつもりはない。故障のリスクを考えて連投を避けたり球数制限をすることには賛成である。しかしするのであれば、予選開始前から選手全員にその旨を伝えて理解してもらうことはチームの団結力を生むためにも大事なことであり監督の役目でもある。そして最低でも準決勝で投げるのであれば決勝では投げさせないことを事前に選手全員に納得させておくことは必要である。そのうえで選手の総意が〝準決勝は自分たちで何とかするから決勝で投げてもらいたい〟となるのなら、その思いを尊重すれば良いのである。今回はそのような選手全員に対する配慮が全くなかったのが大きな問題だと思う。選手の気持ちは完全に無視されてしまったのだ。
 

 加えて問題なのが、決勝戦で勝とうという姿勢が見られなかったこと。エースを外したとしても他の選手を上手く起用して何とか勝ちに結びつけようとするのが監督の仕事のはずだが、実際にはその逆で、まるで甲子園には行きたくないかのようにも受け取れる采配だった。S選手を地方予選の決勝戦で投げさせなくても、甲子園に行けば投げさせないわけにはいかず、故障のリスクは今まで以上に大きくなるのは確実である。そのため甲子園を諦めたと考えてもおかしくはない。
 

 以前からS選手は甲子園に行かない方が良いという声も多かった。もちろん故障のリスクを考えてのことである。特にプロ野球関係者は故障を最も恐れていただろう。甲子園で投げようが投げまいが彼の超一級の評価は揺るがないのだから。ただでさえS選手の起用法についてはいろいろ言われていたところに、実際にあと1勝で甲子園というところまできてそれらの声はこの監督に大きなプレッシャーとなっただろう。甲子園に行って、もしも故障させたら大変なことである。どうしたら良いのか悩んだことだろう。その結果、批判覚悟に〝故障のリスクを最小限に抑える〟という選択をしたとしても不思議ではない。ただ、この選択は監督にとっては不本意なものであり苦渋の決断であろうことも想像できる。
 

 甲子園に行かないという選択をしたのなら今回の決断と采配には合点がいく。しかし、いくら一人の有望な選手の将来を考えたとしてもそんなことはあって良いのだろうか。決勝戦まで進んでおいて勝つ気が無いのなら予選会に参加する必要は無いのである。甲子園出場を掛けた選手権なのだから。これらのことはあくまでも推測でしかないが、どう考えてもそうとしか思えない決断と采配なのである。
 

 今回の決断は一人の有望な選手の将来のことを考えた点においては褒められることではある。しかし、当日までS選手を含めた選手たちの誰にも伝えることはなく監督の独断で決められた点においては全く賛同できない。その代償としてチームメイトの希望や夢を台無しにして大きな傷を残してしまったのではないか。S選手自身も最後の最後で夢に挑戦することすらさせてもらえなかったのである。甲子園出場を目標に掲げて頑張ってきたこのチームの最後の試合がこのようなことではあまりにも残念過ぎる。本当に本人やチームのことを考えるのであれば他にやり方があったはずだ。監督には自分は教育者であるという視点が完全に抜け落ちている。今回の決断は主役である子供たちの思いに寄り添おうともせず、無残に夢を打ち砕くやり方であって、とても英断と言えるものではない。大人たちの勝手な考えで子供たちの夢を一方的に壊したと言うしかない、あまりにも視点が狭すぎる残酷な決断だと思う。

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