そっくり人形作りの公式

　そっくり人形に決まりはありません。そっくりであればどのように作っても構わないのです。中にはそっくりでないものもありますが、制作者がそっくりだと言い張ればそれはそっくり人形になります。極端な話、ナスに目や鼻を付けて〝これは〇〇さんにそっくりです〟と言えば見た人は何となくそう見えたりするものです。
　

決まりが無いということ

　決まりが無いということは何でもありだと言うことです。自分のオリジナリティを出すために制作者は知恵を絞ります。似顔絵ではデフォルメすることで個性を出して人気になることは珍しくありませんが、そっくり人形ではデフォルメはあまり好まれないように感じます。だからと言ってリアルすぎても面白味に欠けるようです。その加減が難しいところです。
　

　デフォルメをしないと出来上がりのイメージに大差はなくなってきます。ではどこで差別化を図るかというと素材だったり価格だったり制作期間だったりします。もちろんどれだけ似ているかということが最も大事なのですが、それは出来上がってみないと評価できないことです。注文前にＡ社とＢ社の自分のそっくり人形を比べて検討することは不可能です。ですからそっくりに仕上がることを前提として考えるしかありません。
　

　制作期間を短縮できれば安く提供できます。でも期間を短縮するには制作工程を簡素化する必要があります。手間を掛ければ掛けるほど時間を要します。するとその分人件費も掛かり価格に反映されてしまいます。良いものを作りたいと思うと手間が増えるものです。でも手間を掛ければその分良いのものが出来るかというとそうでもありません。ですから簡素化して尚且つ良いものを作るのが仕事として大事なことだと思います。
　

　作り方に決まりが無いということはそれだけ自由だということです。それが楽しいことでもあり難しいことでもあります。決まりがあればそれに則って行っていれば良いのですが、自由だと自分で決まりを作らないといけません。そこには自分の思いを反映させたいし、同時にお客様のニーズに応える工夫も必要です。物作りは拘り始めたらどれだけでも拘れます。でも拘り過ぎるととても高価なものになってしまいます。高価過ぎると買う人がいなくなり単なる趣味の世界になります。仕事として継続するには拘りたいけど適正な価格で販売できるように妥協点を見出さないといけない、そのバランスを取ることに苦心している毎日です。