そっくり人形作りの公式

　自分のそっくり人形は欲しいけど赤の他人のそっくり人形はいらない、という人が殆どだと思います。自分だけでなく自分の家族、あるいは好きな芸能人やスポーツ選手にそっくりの似顔絵や人形は何故か欲しくなるものです。それなのにどれだけ精巧に作られていても全く知らない人の人形を欲しいとは思いません。むしろどこかに存在する人だと思うと自宅に置いておきたくないとまで思うのではないでしょうか。
　

自分という特別な存在

　新年度が始まり来月から新しい元号に変わります。新元号が〝令和〟に決まったことはもう皆さんご存知のことと思います。
　

　新元号発表時に令和以外の対案はその数も含めて非公表との説明がありました。しかし翌日には他に5案あり〝英弘〟〝久化〟〝広至〟〝万和〟〝万保〟だということまで判明しました。向こう30年間秘密にするはずだった情報が早々と漏れたことに非常に驚くと同時に秘密厳守が出来ない関係者に不信感を抱かざるを得ません。やはり人間に完璧を求めてはいけないようです。
　

　対案が分かるとすぐに6案それぞれの好感度調査が行われました。結果は7割ほどの人が令和を支持したようですが、それは当然の結果だと思います。既に決まって国民全体で良いと受け入れ済みの元号なので、あとから周知された他の5案から見たら公平な調査とは言えません。決定した元号が令和でなくても同様の結果になったことでしょう。自分のものが良いものだと思いたいという心理は誰にでもあります。よその子よりも我が子が一番という親の心理みたいなものです。自分たちの元号になった令和には良いとこ探しをして廃案になったものには粗探しをしてしまうものなのです。他の5案がどれも大差ない支持率だったことから、元号決定前に調査を行えば令和も同じ程度の支持率だったと思います。もしかしたら〝令〟は〝命令〟や〝冷たい〟というイメージを抱かせるためトップの座も危うかったかもしれません。
　

　このように自分のものには愛着が湧くものです。欠点には目をつぶり良いところばかりを探して美化したくなるものです。なんだかんだ言っても自分の顔には愛着があります。だからこそスマホで自撮りして楽しんだりするのでしょう。自分のそっくり人形は欲しいけど知らない人の人形はいらないというのは当然です。全く知らないおじさんのそっくり人形が部屋にあったら気持ち悪いだけです。私は今回の新元号に関して多くの批判がされるのではないかと懸念していました。今までの愛着ある平成に比べて新元号への粗探しをする人たちがいるのではないかと思ったのです。でもそれは杞憂だったようです。国民全体で新たな元号を素直に受け入れられてすでに愛着を持てているというのは喜ぶべきことだと思います。