そっくり人形ヒロのひとりごと 191204 ~聞いてもらいたいわけじゃないけど…~
しつけと体罰1
「身体に苦痛や不快感を引き起こす行為」は体罰である。子どもに対する親の体罰を禁じた改正児童虐待防止法などが来年4月から施行されることを受け、厚生労働省がこのように体罰を定義する指針案を示した。具体的な例として「長時間の正座」や「夕食を与えない」など5つ挙げている。暴言や怒鳴るなどの行為は体罰には含まれていない。
しつけと称しての虐待が後を絶たないことから、しつけと体罰の違いを明確化する必要があるとの意図で有識者会議を経てまとめられたもののようである。しかし、この案に納得できる人はどのくらいいるのだろうか。
体罰の善悪
このように定義されたということは、苦痛を伴う体罰は子供に悪影響ばかりを与えるものであることが前提となっているように感じられる。果たしてそうだろうか。そして体罰を伴わないしつけとはどのようなものなのだろうか。
親が我が子を虐待死させる事件が世間を騒がすことが以前よりも多くなっているように感じる。加害者の親は「しつけのつもりだった」と弁解することが常である。しかし、本当にしつけが行き過ぎて虐待死に至ったのだろうか。ここを短絡的に捉えてしまうと「体罰を伴うしつけは許されない」という結論に導かれてしまう恐れがある。
しつけとは「社会生活に適応するために、望ましい生活習慣を身につけさせること」である。しかし、虐待事件を起こす親の多くはこれとは違うだろう。彼らの目的は「自分の思い通りに行動する習慣を身につけさせること」だ。だから最初からしつけをする目的ではないのである。それを弁解通りしつけだと信じるからおかしなことになってしまう。「俺の言うとおりにしないと痛い目に遭うぞ」ということを分からせるために、始めから痛みを伴う罰を与えているのである。しつけではなくいじめとしての体罰だ。この点は議論されたのだろうか。
そして最近では、体罰は全ての子供に悪影響を与えるような印象が大きくなっている。よく言われることだが、「俺たちの子供の頃は、悪いことをしたら叩かれるのは当たり前だった」という時代は、今まで長いこと続いていた。では、その時代を生きてきた過去の子供達(すでに大人になった人達)は皆体罰の悪影響ばかりを引きずって生きているのだろうか。そんなことはないだろう。「社会的に悪いと言われていることをやったら、痛い目にあう(だからやってはいけない)」ということを子どもの時に体罰により教わった人が大勢いることは否めないのではないか。
「そのようなことは、きちんと理屈で説明して理解させるものだ」という意見も理解は出来る。間違いなくそれは正論だ。しかし、幼いときは言葉で伝えても理解できないことは多い。その場合、理解できないのだから仕方がない、では済まされないことが往々にしてあるのも事実だ。頭で理解できないことでも、適度な体罰を受けることで事の善悪が分かることもあると思う。それに善悪の判断が出来なくても、痛みを伴うことで「(これをすると痛い罰を受けるから)しないようにしよう」という理解は出来て、自ら危険から身を守ることが出来るようになるものだ。その結果として、やってはいけないことをやらないという行動が身に付くようになる。これは脳の発達と本能の関係で、物事の理解力よりも痛みによる嫌悪感の方が優先されるための行動と言える。
人を故意に傷付けた場合、相手がどれほどの痛みを伴ったのかを知ることは大事だと思う。傷付けた相手の代わりに親に殴られることで「私はこれくらいひどいことをしたんだ」と身をもって知ることが出来、二度と同じ過ちを犯さなくなることは十分考えられる。単なる感情に任せた暴力は許されることではないが、これはいわゆる「愛のムチ」であり、親だからこそ出来るしつけだと思う。逆に他人を傷つけておきながら、その痛みや罪の重さを理解することなく、そのまま成長した場合の方が悪影響があるのではないか。
体罰を受けることで子供に何らかの影響があることは否定できない。しかし全て悪い影響かというとそれは違うだろう。良い影響もあるのだ。それを一律に「体罰は悪」と括ることには疑問だ。私は決して体罰を推奨しているわけではない。むしろ体罰は反対だ(我が子に手を挙げたことは一度もありません)。が、「身体に苦痛や不快感を引き起こす行為」を体罰と定義して、「しつけに体罰を禁じる」こと、及び「暴言は体罰ではない」とする今回の指針案には賛同できない。
・・・この話はまた次回に続く。
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