台風19号の爪痕

　台風19号の影響は、ここ石川県では予想していたほどのことはありませんでした。特に大きな被害の報告はないようです。しかし、全国的には現時点で死者19人行方不明者14人とのニュースが流れています。もしかしたらまだ増えるかもしれません。
　

水の怖さ

　今回は大量に降った雨で氾濫した河川が多いようです。竜巻などの暴風も怖いですが、やはり水害は怖いです。道路の側溝で流された人もいたようです。水流の強さというのは相当なもので、一度足元をすくわれて流されたら、流れが続いているうちは自分で体制を立て直すのは非常に困難です。しかも慌てているので余計に足が地に着かず、その状態で水を飲んでしまえば呼吸困難に陥ります。
　

　そもそも水が膝上まであるときに普通に歩こうと思っても、思い通りには歩けないものです。そこに水流があったら尚更です。海の浅瀬で歩く時のことを想像すれば分かると思います。少し強い波が来ただけで倒れそうになります。ズボンや靴を履いていたら更に抵抗が強まり、歩くのに大きな力を要します。浸水してから避難するのは危険だということです。
　

　しかし、そうは言ってもなかなか事前に避難するという決断をすることは難しいものです。特に過去に経験が無い場合は、「ここは大丈夫だろう」という思いが抜けません。実際に今まで大丈夫だったのですから。一人でいることが心細い高齢者はともかく、避難所よりも自宅にいたいと思うのは当然の心理です。そのようなことから浸水という被害が出てからでないと決断出来ない人が多いのは理解できます。
　

　しかし、実際に自宅が浸水してから慌てて避難したことで死亡に至ってしまうことも十分に考えられます。冠水した道路を歩くのはとても危険です。ただでさえ歩きにくい上に、濁水により路面が見えないため、蓋が空いたマンホールや側溝に落ちるかもしれません。その時に水を飲んでしまったらその場で溺れる危険性が高まります。この程度の側溝で溺れるわけがないと思っていても水を飲んでしまったらパニックになるのです。どれだけ泳ぎが上手い人でも海でうっかり水を飲んでしまったら溺れるそうです。溺れている人を助けに行った人が溺れたという事故を良く聞きますが、そういうことなのです。
　

　状況にもよりますが、川の氾濫などで道路が冠水してしまった場合は、避難するよりも2階で過ごした方が安全な場合もあるでしょう。とにかく水を侮らないことです。人間は水無しでは生きていけませんが、水によって命を落とす危険も常に隣り合わせなのです。