そっくりになりたい

　コウは今夜もこっそりと人気者に顔を変えています。イケメンにそっくりになってその気分を味わいたい、その思いでいっぱいです。
　

　すでに真夜中。店長はもうぐっすりと眠っていて明日の朝まで来ることはありません。
　

Change ＆ Challenge

　時間はたっぷりとあるはず、でも思ったようにいきません。
　「何か上手くいかないな。こうすればいいはずなのに。」
　コウは焦ってきました。
　「似ているはずなのにイケメンに見えない…。」
　鏡を見ながら何度もやり直しますが、思い通りの仕上がりになりません。時間はどんどん経過していきます。
　「落ち着け、落ち着け、これでいいはずなんだから。」
　自分に言い聞かせます。するとだんだんと似てきたではありませんか。
　「よし、良い感じになってきたぞ。髭も付けてみよう。」
　最後に髭を付けて、やっとの思いで完成させました。
　「ふぅ…、何とか出来た。そっくりになるのって大変だな…。」
　コウは改めてそっくりになる大変さを実感しました。
　「ああ、疲れた。イケメンって疲れるんだなぁ。この顔になったら何故かお風呂にはいりたくなってきた。ローマ風呂が良いな。」
　気付くと外はもう明るくなっています。時計を見るとすでに朝の7時半を回っています。
　「急がないと店長が来ちゃうぞ。」
　慌てて片付けていつもの棚の奥に隠れました。
　まだ顔を変えるのに慣れていないコウは小さく呟きました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　注）身体はコウのままです。