東京マラソン

　昨日は開催に賛否両論がある中、エリートランナーのみによる東京マラソンが行われました。
結果は大迫選手が全体の4位ながらも、2時間5分29秒の日本新記録でオリンピックの代表権をほぼ手中に収めました。
一時は遅れ気味になりながらも、後半の見事な走りに多くの人に感動を与えたことでしょう。
　

世界との差

　大迫選手は日本新記録を出してもトップとは1分14秒も差がありました。
レース中は先頭集団の後方に位置していて、先頭争いに絡むことはありませんでした。
それに対して、中盤までハイペースで先頭争いをしていた井上選手の走りを褒めたたえる声も多いようです。
確かに井上選手はこのまま最後まで行くのではないかと思わせるほどの快走を途中までしていました。
　

　日本人ではトップの走力を持つ大迫選手も井上選手のように先頭争いをしないと世界では勝てないと言われています。
マラソンＯＢの専門家や多くのファンも同じことを口にしています。
でもそれは理想であり、先頭争いをして更に勝つだけの実力が無いと出来ないことです。
すぐに身に付けられるものではないし、日本人の身体的能力でどこまで対応できるのかも疑問です。
今は序盤から先頭争いをしたら、むしろ世界では勝てないというのが現実です。
世界で勝つためには、序盤から先頭争いが出来るくらいの力が無いとダメだと言いたいことは分かります。
でも終始先頭争いをしないと勝てないわけではないと思います。
　

　世界との差を誰よりも感じているのは大迫選手本人でしょう。
彼はとてもクレバーなランナーだと感じます。
自分の実力をよく分かっていて、それに見合ったレースマネジメントが出来る選手なのだと思います。
あのハイペースで先頭争いをしていたら、いずれ潰れることは分かっていたでしょう。
　

　今回の井上選手やMGCでの設楽選手のような走りをしたら、必ず後半に失速します。
要するにオーバーペースです。
確かに先頭争いをしてくれると見ていても楽しいものです。
でも最終的には結果が全てです。
オーバーペースが祟り失速し始めたら、後は落ちるのみです。
どんなに練習を積んだランナーでも根性でどうにかできるものではありません。
人間の身体はそうなっているのです。
途中までどれだけ素晴らしい走りをしても、結果が悪ければ失敗なのです。
そのチャレンジ精神を讃える人もいますが、プロとしては愚かな行為です。
　

　プロならば最も実力を発揮できる走り方をしないといけません。
今回大迫選手はそれが出来たからこそ新記録が出せたと考えられます。
井上選手と並走するように先頭争いをしようと思えば出来たはずです。
でも、もしそうしていたら、おそらく日本人トップの座も危うかったでしょう。
　

　今回のレースで2位になった選手は、途中まで大迫選手と並走していた選手です。
この選手がスパートした時に大迫選手は付いていけなかったのです。
大迫選手を40秒引き離し、トップと34秒差まで迫りました。
大迫選手はこの選手に付いていけるだけの余力が無かったということです。
今求められるのはここで付いていけるようになることだと思います。
それが出来るようになれば、オリンピックでのメダルも可能性があります。
　

　レース序盤から先頭争いをするかどうかは単にマネジメントの問題です。
42.195㎞をどのようなペースで走ったら最も実力を出し切れるか、それが大事なのではないでしょうか。
マネジメントの仕方は人それぞれです。
終始レースの先頭を争うことに拘っていては、かえって世界との差が広がるばかりのような気がします。