MGC（マラソングランドチャンピオンシップ）

　今日の午前中に東京オリンピックのマラソン代表を選考するレースが行われました。このレースの男女上位2名が代表枠3のうちの2つを占めることになります。過去に例のない一発勝負の選考レースです。
　

それぞれの走り

　一発勝負とはいえ、このレースに出るまでにも選考があり、参加者はその高いハードルを乗り越えてスタートラインに立っているのです。そのため男子30人、女子10人というレベルの高い精鋭たちの勝負なので、どのような展開になるのか楽しみでした。
　

　レース前から多くの人が注目していたのは大迫選手と設楽選手だと思います。二人はともに日本記録を更新したことで1億円の賞金を手にしています。それだけ持ちタイムの早い選手です。ただ、暑い時期のレースなので、そこまで優勝タイムが速くなるとは思えません。2人以外にも暑さに強い選手が勝つ可能性も十分あります。
　

　男子は予想通り設楽選手がスタートから飛び出し独走態勢を築きます。ただこの暑さの中であのスピードでは最後まで持たないのではないかと心配していました。その中で注目されたのは常に2位集団の中にいた日本記録保持者の大迫選手です。特に早いペースではないのに決して集団の先頭に立たずに走る姿は、作戦なのか体調が良くないのかが分かりません。集団の先頭を走る選手がいろいろと替わるので、そのたびにペースが替わることが懸念材料となります。大迫選手は途中から何度も右わき腹を押さえる仕草が見られていたので、余計に心配でした。
　

　そして設楽選手のペースが25㎞辺りから徐々に落ちていきます。中盤にペースが落ちるということは、どれだけ大差を付けていても後続に追いつかれる不安があります。ペースは落ち始めると元に戻すことはほぼ困難で、逆にどんどん落ちていくものです。残り5㎞くらいであれば何とか気持ちで走り切れますが、10㎞以上あるとそれも無理です。特に登りがあるとあっという間に差が縮まります。30㎞くらいの走りを見ていると、いずれ後続に追いつかれることは予想できました。

　37㎞付近で2位集団に追いつかれ、そのまま引き離されてしまい設楽選手のこのレースでの代表決定は無くなりました。しかし、一方の大迫選手も相変わらず集団を抜け出すことが出来ず、不安を抱かせたままです。
　

　そんな中抜け出したのは中村選手でした。きつい登りでスパートしてトップに立ち、追いすがる大迫選手と服部選手を振り払いゴールしました。最後の登りに入ってからの強さは圧巻でした。タイム的には平凡でしたが、オリンピック代表に相応しい走りだったと思います。2位には服部選手が大迫選手との争いに勝って代表の座を確定しました。大迫選手は3位となり、有力候補であるけれど確定はしていないという不安定な立場となりました。今後の3つの選考レースの結果待ちです。もしいずれかのレースで日本記録を更新する選手が出たら、その人が代表となり大迫選手は落選となります。
　

　今回大きな賭けに出た設楽選手は結果的には惨敗でしたが、オリンピックでメダルを狙うには前半のペースで最後まで走り切ることが求められるので、挑戦したことには大きな意味があると思います。恐らく彼は残りの3レースのどこかで日本記録を狙いに行くのではないかと思います。
　

　大迫選手は持ちタイムは圧倒的に速いのですが、まだ強さを感じませんでした。今日のような展開なら2位集団を引っ張って自分のペースで走り、ラストスパートで後続を引き離すくらいになってもらいたいです。それだけの力がある選手だと思っています。
　

　何はともあれ、今まで不透明で批判が多かったオリンピック代表選考を新たな形で行ったことはとても良かったと思います。落選した選手たちも納得できる選考方法だと思います。（最後の1枠の決め方にはまだ問題があるようにも思いますが。）